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東京家庭裁判所 平成9年(少ハ)400010号 決定 1997年5月01日

少年 D・H(昭和53.6.3生)

主文

少年を平成9年9月26日まで中等少年院に継続して収容する。

理由

(少年の収容経過)

少年は、平成8年6月27日東京家庭裁判所において、毒物及び劇物取締法違反保護事件により中等少年院送致決定を受け、同年7月2日新潟少年学院に入院し、翌3日少年院法11条1項ただし書による収容継続決定を受けたが、平成9年6月26日にその収容期間が満了する。

(申請の趣旨及び理由の要旨)

少年に対する教育目標については、改善、努力のあとは見られるものの、それが確実に身に付いたとまではいえず、更に集団生活の中で情緒的交流の体験を積ませ、課題に対し粘り強く取り組む姿勢の定着へ向け出院準備教育過程残期間における指導の徹底が必要である。

ところで、少年は、出院後父の下で稼働する予定であるが、両親が離婚を決めたことで、慕っている母と離れるという現実に直面することと見込まれることなどから、出院後帰住先での生活と就労状況の安定を見守るまでの間、専門家による指導、助言が不可欠である。よって、期間満了の日から同年9月26日までの3か月間の収容継続が必要である。

(当裁判所の判断)

一件記録及び審判の結果によれば、申請の理由の要旨記載の事実のほか、少年は、入院当初こそは反省が希薄で、親への依存傾向が見られたり、院内で問題行動を起こすなどしたものの、内省処遇や面接指導を通じ粘り強さを示し自立への決意を固めるなどの進歩がみられ、入院から8か月余りが経過した平成9年3月1日に1級上に進級するなどおおむね順調に推移し、同年6月5日ころには仮退院が見込まれている。

ところで、少年は、平成元年ころから別居状態を続けていた両親の葛藤に気を使い、依存欲求の満たされなさをシンナー吸入で紛らわしていたもので、親も少年への負い目から毅然とした態度が取れず、このことが少年においてシンナー吸引を断ち切れずに収容保護まで立ち至った主因と見られてきたところ、少年の入院中に両親が離婚の方針を決め事実上の解決をみたことから、その面では、環境の改善が図られたものと認められる。しかしながら、母親が母方実家の近くである栃木県内に転居したところから母方に帰住することが事実上不可能となり、母親により親和していた少年が、新たな交際相手が同居している父親の下へ8年ぶりに帰住し同居することとなり、そこで安定した生活を営んでいけるかについては不安定な要素もあり、仮退院後しばらくは、専門家により、家族関係、勤務態度、交遊関係について助言、指導を加えることが必要である。

以上の事情に鑑みると、本人の犯罪的傾向はまだ矯正されていないため、平成9年6月26日の満了をもって少年院から退院させるには不適当な状況にあると認められるから、退院後の保護観察期間を含め相当期間本人の収容を継続する必要があり、申請どおり、同年9月26日までの間、中等少年院に収容を継続することが相当である。

よって、少年院法11条4項、少年審判規則55条により、主文のとおり決定する。

(裁判官 古田浩)

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